【詳解】GAS(Google Apps Script)で最も単純なWebページを公開しよう

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公開日:2023年2月7日 更新日:2023年2月7日

▎はじめに

GAS(Google Apps Script)でWebページを作成できるようになりたい!といった方に向けて、GASのWebページに関連したスキル・知識を詳細に解説した記事です。本記事では、以下、スキルと知識を得ることができます。
  • GASのHTMLファイルを新規に作成する方法
  • Webページを閲覧できるようにする方法
  • HtmlService.createTemplateFromFileの理解
  • doGet関数の理解
  • デプロイの理解

▎記事のゴールを確認しよう

今回の記事で解説する「GASの最も単純なWebページ」は以下の画面です。最も単純ですが、GASでWebページを表示するための重要な基礎となるので詳しく解説します。

画面イメージ

Hello World !!と表示されるWebページです

▎GAS用語の整理(すでにご存知の方はスキップしてOKです。)

用語の理解は学習効率に直結するのでまずはGAS特有の用語を整理します。
Googleアカウント > Googleドライブ > GAS(Google Apps Script) > スクリプト(スタンドアロンスクリプト・コンテナバインドスクリプト) > スクリプトファイル、HTMLファイル
という構造になっております。若干、複雑なので「図1 GASの用語と構造」、「表1 GASの用語とその意味」にまとめてみました。
 
図1 GASの用語と構造
図1 GASの用語と構造
表1. GASの用語とその意味
用語意味
GoogleドライブGoogleが提供するクラウドストレージサービスのことです。Googleドライブを利用することで写真や動画、Googleサービスのファイルなどを安全に保存・共有することができます。GASもGoogleドライブで保存・共有されます。
GoogleサービスGoogleが提供するスプレッドシート、フォーム、スライドなどの各種サービスのことです。
GAS(Google Apps Script)Googleサービスのタスクを自動化するためのローコードプラットフォームのことです。HTML、CSS、JavaScript を使ってソースコードを作成します。開発したソースコードは、Googleのサーバーで実行されます。
スクリプト(プロジェクト)「GASファイル(拡張子が .gs)」、「HTMLファイル(拡張子が .html)」をまとめる単位のことをスクリプト(もしくはプロジェクト)と呼びます。スクリプト単位でそれらを保存、共有します。スクリプトには、スタンドアロン型コンテナバインド型の2種類があります。 *記事によっては「スクリプトファイル」を「スクリプト」と呼ぶ場合もあるので注意してください。
スタンドアロンスクリプト単体で動作するスクリプト(プロジェクト)のことです。単体とは、特定のスプレッドシート、フォームなどに紐づかない状態を指します。Googleドライブで新規作成するとスタンドアロンスクリプトとなります。 Googleドライブで表示されるため管理しやすいことが利点です。
コンテナバインドスクリプトスタンドアロンスクリプトが単独で動作するのに対して、スプレッドシート、フォーム、スライドなどのGoogleサービスと紐づく状態で動作するスクリプトをコンテナバインドスクリプトと呼びます。Googleサービス(例えば、スプレッドシートなど)から新規作成するとコンテナバインドスクリプトとなります。 Googleドライブに表示されないので管理しずらいことが難点ですが、スプレッド特有の機能が使えることが利点です。特有のGAS機能とは、スプレッドシートにダイアログメッセージを表示するなどです。 特有のGAS機能の詳細はこちら
コードファイル(.gs)Googleサービスのタスクを自動化するためのソースコードを記述します。V8 ランタイムというJavaScript バージョン(ES5)で動作します。
HTMLファイル(.html)Webページを表示するためのソースコード(HTML、JavaScript、CSS)を記述します。コードファイル(.gs)と違って、人気のJavaScript、CSSライブラリを使うことができます。例えば、TailwindCSSなどのCSSフレームワーク、vue.jsなどのJavaScriptフレームワークが利用可能です。

▎GASでWebページを公開しよう

GASでWebページを公開するまでの流れは以下の通りです。順を追って説明していきます。
  • 手順1. Googleドライブにスクリプト(スタンドアロンスクリプト)を作成する。
  • 手順2. スクリプトにHTMLファイル(.html)を追加する。
  • 手順3. コードファイル(.gs)にdoGet関数を定義する。
  • 手順4. Webアプリとしてデプロイする。
  • 手順5. Webページに文言追加する。

手順1. Googleドライブにスクリプト(スタンドアロンスクリプト)を作成しよう

まずは、Googleドライブにスクリプト(スタンドアロンスクリプト)を作成してみましょう。
  1. GoogleドライブにGAS用のディレクトリを作成します。
      • Googleドライブ → 新規 → 新しいフォルダ
      • 例えば、「GASスクリプト」というディレクトリを作成する
「GASスクリプト」ディレクトリの作成
「GASスクリプト」ディレクトリの作成
  1. GAS用のディレクトリにスクリプト(スタンドアロンスクリプト)を作成します。
      • Googleドライブ → 新規 → 新しいフォルダ → その他 → Google Apps Script
      • スクリプトが生成されると、スクリプトエディタが起動します。
       
スクリプト(スタンドアロンスクリプト)の作成
スクリプト(スタンドアロンスクリプト)の作成
  1. スクリプト名(プロジェクト名)を変更します。
      • 「無題のプロジェクト」をクリック → 名前変更
      • 例えば、「HelloWebアプリ」など
スクリプト名(プロジェクト名)の変更
スクリプト名(プロジェクト名)の変更

手順2. スクリプトにHTMLファイル(.html)を追加しよう

次に、スクリプト(プロジェクト)に HTMLファイルを追加してみましょう。
  1. HTMLファイル(hello.html)を追加します。
      • 「+」をクリック → HTML → 無題 → helloに修正する
      • hello.htmlが表示されることを確認する
       
HTMLファイルの追加
HTMLファイルの追加
hello.htmlが表示されることを確認
hello.htmlが表示されることを確認
  1. hello.htmlに の見出し要素を追加します。
       

手順3. コードファイル(.gs)にdoGet関数を定義しよう

次に、コードファイル()に doGet関数を定義しましょう。
  1. に書かれているコードを全て削除します。
 
コードを全て削除
コードを全て削除
  1. に 以下、doGet関数を追加します。
      • HtmlService.createTemplateFromFileについては後で解説します。ここではコピー&ペーストしてください。
  1. 変更を保存します。

手順4. Webアプリとしてデプロイしよう

Webページとして閲覧できるようにするためには、デプロイという作業が必要です。
デプロイとは、作成したスクリプトに対してWebアプリURLを発行する作業のことです。WebアプリURLを発行することでこのWebページにアクセスできるようになります。
デプロイしてみましょう。
  1. デプロイの画面を起動します。
      • 「デプロイ」をクリック →「新しいデプロイ」を選択します
       
デプロイ画面の起動
デプロイ画面の起動
  1. Webアプリデプロイを準備します。
      • ⚙をクリック → ウェブアプリを選択します。
       
ウェブアプリデプロイの準備
ウェブアプリデプロイの準備
  1. Webアプリをデプロイします。
      • 説明
        • 空白でOK
      • 次のユーザーとして実行
        • 「自分(メールアドレス)」を選択
      • アクセスできるユーザー:
        • 「全員」を選択
      • 「デプロイ」をクリックする
       
Webアプリのデプロイ
Webアプリのデプロイ
  1. WebアプリURLをクリックしてブラウザで表示します。
      • ウェブアプリ → URL → WebアプリのURLをクリック → ページが表示される
 
WebアプリURLをクリックしてブラウザで表示
WebアプリURLをクリックしてブラウザで表示
  1. デプロイが無事に成功すると、右の画面のWebページが表示されます。
Webページ表示画面
Webページ表示画面

手順5. Webページに文言を追加しよう

無事にWebページは表示されましたでしょうか?
次に、文言追加の手順をやってみましょう。これができれば、「最も単純なWebページの作成」は完了です!
  1. 「”今日の日付”に作成しました。」という文言を追加してみましょう
      • hello.htmlに以下 の段落要素を追加します。
  1. デプロイ管理画面を起動します。
      • 「デプロイ」をクリック → 「デプロイを管理」選択します
      • 修正する場合は「デプロイを管理」なのでご注意ください!
      • 「新しいデプロイ」だと、WebアプリのURLが変わってしまいます
デプロイ管理画面の起動
デプロイ管理画面の起動
  1. 「新しいバージョン」をデプロイします
      • 「🖋」マークをクリック → 「新バージョン」を選択 → 「デプロイ」を実行する
      • 他の設定は変更しなくて大丈夫です。
 
「新しいバージョン」のデプロイ
「新しいバージョン」のデプロイ
  1. 前回同様にWebアプリURLをクリックしてブラウザで表示します。
      • ウェブアプリ → URL → WebアプリのURLをクリック → ページが表示される
      • 「”今日の日付”に作成しました。」という文言が表示されたら無事に成功です!
       
「”今日の日付”に作成しました。」という文言が表示された画面
「”今日の日付”に作成しました。」という文言が表示された画面

▎Webブラウザからのリクエストを受け付けるdoGet関数について理解しよう

ここからは、Webアプリが動作する仕組みを一つ一つ解説していきます。まずは、doGet関数について理解しましょう。の コードは以下の通りです。この の部分がdoGet関数です。
ブラウザからのGETリクエストをGASが受けた時に「doGet関数を実行する」というルールが決められています。このような仕組みを「シンプルトリガー」といいます。doGet関数はシンプルトリガーの一種というわけです。上記の説明も含めてdoGet関数の役割をわかりやすくしたのが下の図と流れです
図2. Webページが表示されるまでの流れとdoGet関数の役割
図2. Webページが表示されるまでの流れとdoGet関数の役割
📄
Webページが表示されるまでの流れ
  1. ユーザーが、GASアプリURLをクリックします。
  1. ブラウザは、GASアプリURLを解析し、Googleクラウドサーバーに「HTMLをください!」というGETリクエストを送信します。
  1. GASは、ブラウザからのGETリクエストを受け取ると、ルールに従って「doGet関数」を実行します。doGet関数はHTMLファイルを読み込んで処理します。
    1. このルールを「シンプルトリガー」といいます。
  1. GASは、処理したHTMLをレスポンスとしてブラウザに返します。
  1. ブラウザは、レスポンスとして受け取ったHTMLを解析します。
    1. この解析を「レンダリング」といいます。
  1. ユーザーは、Webページが表示されたことを確認します。

シンプルトリガーの一覧

doGet関数も含めて、シンプルトリガー紹介します。詳細は別の記事で紹介するとして、この記事では概要だけ記載しておきます。
 
表2. シンプルトリガーの一覧と概要
関数名概要
onOpenスプレッドシート、ドキュメント、プレゼンテーション、またはフォームをユーザーが開くと実行されます。
onInstallGoogle ドキュメント、スプレッドシート、スライド、フォーム内からエディタ アドオンをインストールした時に実行されます。
onEditスプレッドシート内の値を変更した時に実行されます。
onSelectionChangeスプレッドシートで選択内容を変更した時に実行されます。
doGetユーザーがウェブアプリにアクセスしたり、プログラムが HTTP GET リクエストをウェブアプリに送信した時に実行されます。
doPostプログラムが HTTP POST リクエストをウェブアプリに送信した時に実行されます。
もし、詳細に興味ある方は、公式ガイドにソースコード例も含めて記載してあるので参考にすると更なる理解に役立つかと思います。

▎HtmlService.createTemplateFromFile(ファイル).evaluate()について理解しよう

HtmlService.createTemplateFromFile(ファイル).evaluate()とは、指定したファイルからHTMLを出力するための一連の処理です。この一連の処理を覚えておくとファイルからHTMLを出力するのに役立ちます。
図2. Webページが表示されるまでの流れとdoGet関数の役割 の「③ HTMLの読み込み」にあたります。
以下、それぞれのオブジェクト、メソッドを一つ一つ解説していきます。

HtmlServiceとは

HtmlServiceとはHtmlServiceオブジェクトのことで、HTMLファイルを操作する機能とセキュリティを提供してくれます。
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【重要ポイント】 HtmlServiceによってHTMLの安全が保証することができます。 HtmlServiceを使うことで、HTMLファイルの読み込み、解析などの機能を提供することはもちろんのこと、セキュリティを担保することができます。セキュリティの具体例としては、HTMLの中の悪意のあるアクションを実行できないようにすることを「サニタイズ」といいますがこの「サニタイズ」をHtmlServiceが実行してくれます
もうちょっと詳しく知りたい方は公式リファレンスを参考にしてみてください。

HtmlService.createTemplateFromFile(ファイル名)とは

指定したファイル(今回だとhello.html)を読み込み、その内容をHtmlService.HtmlTemplateオブジェクトにするメソッドです。この記事では扱いませんが、HtmlTemplateオブジェクトを使うことで、スクリプトレットと呼ばれる動的にHTMLを生成する構文を使うことができます。
📄
【重要ポイント】createTemplateFromFile(ファイル名)で、HtmlTemplateオブジェクトが取得できます。また、HtmlTemplateはスクリプトレット構文を扱うことができます。
以下コード例で、 の部分がスクリプトレットです。
スクリプトレット構文を使うとHTMLの中にGASのコードを埋め込むことができます。
スクリプトレットについて詳しく知りたい方は公式リファレンスを参考にしてみてください。

HtmlTemplate.evaluate()とは

HtmlTemplateオブジェクトをHtmlOutputオブジェクトに変換するメソッドです。HtmlOutputオブジェクトに変換することでブラウザにそのWebページを表示できるようになります。
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【重要ポイント】GASのdoGet関数は、戻り値(return)としてHtmlOutputオブジェクトを返すことが決まっています。このルールは以下、公式ガイドに記載されています。 ウェブアプリの要件(公式ガイド)
なぜHtmlOutputオブジェクトに変換する必要があるかというと、doGet関数の戻り値としてHtmlOutputオブジェクトを返すことがGASで決まっているからです。公式ガイドに以下のように記載されています。
スクリプトがウェブアプリとして公開されるには、次の要件を満たしている必要があります。
  • doGet(e) または doPost(e) 関数が含まれている
  • これらの関数は、HtmlServiceのHtmlOutputオブジェクトまたは ContentServiceの TextOutputオブジェクトを返している

▎デプロイについて理解しよう

デプロイとは、GASを使って作成したWebアプリをGoogle Workspaceを使って公開することを指します。デプロイすると、Google WorkspaceでWebアプリ用のURLが作成され、他のユーザーもアクセスできるようになります。
📄
【重要ポイント】デプロイしないとWebページを閲覧することができません。閲覧できるようにするには、Google WorkspaceにGASをデプロイ(公開)して、Webアプリ用のURLを発行する必要があります。

▎おわりに

この記事では、GAS(Google Apps Script)でWebページを作成できるようになりたい!といった方に向けて、GASのWebページに関連したスキル・知識を詳解に解説いたしました。
  • GASのHTMLファイルを新規に作成する方法
  • Webページを閲覧できるようにする方法
  • HtmlService.createTemplateFromFileの理解
  • doGet関数の理解
  • デプロイの理解
上記、5点をしっかりと理解すれば、GASでWebページを表示するための第一歩が順調に踏み出せるかと思います。ぜひ、参考にしてみてください。

完成版コードはこちら

▎参考記事

  • Google Apps Script(ウィキペディア)
    • Google Apps Scriptの定義を調べるに使いました。Google Apps Scriptは、2009年5月にスプレッドシートの開発者のMike Harmがサイドプロジェクトで開発した話など面白いです。
  • スクリプト プロジェクト(公式ガイド)
    • スクリプト、プロジェクトなど用語が色々なブログで色々な使われ方をしていたので、公式ガイドに立ち戻ってみました。プロジェクトは単に「スクリプト」と呼ばれることがあると公式でも述べていました。また、こちらのガイドを参照することで「コードファイル(拡張子が .gs)」と「 HTML ファイル(拡張子が .html)」がスクリプトの管理対象ということも確認できました。

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